君と二度目のお別れをします。


さっきまでは無人だった横断歩道の向こう側。そこに透也がふわりと佇んでいる。

幻覚かと思ってもう一度目を擦ってみたけれど、横断歩道の向こう側から無表情に私を見つめているのはやっぱり透也だ。


「透也!」

夢中で叫んだ私の瞳には、透也以外何も映っていなかった。

チカチカ点滅していた歩行者用の信号も、横断歩道も、横断歩道の周辺の景色も。全てが真っ黒な影になってしまって、見えていたのは青白く透けている透也の姿だけ。

透也に向かって真っすぐに駆け出そうとしたとき、無表情だった透也が突然慌てたように飛び出してくる。

その様子を見て、透也も本気で私に愛想を尽かせたわけではないんだとほっとする。だけど、どうも様子がおかしかった。


『暖乃、危ない!』
「暖乃、行くな!」

透也が私の名前を叫ぶ声に、一貴さんの叫び声が重なる。

背後から聞こえてきた一貴さんの声に気を取られて振り向いたとき、右側からバイクが横断歩道に突っ込んでくるのが見えた。

チラリと視界の端に映った歩行者用信号は、赤。

すーっと血の気が引いていくのを感じたけれど、恐怖が強くて足が地面に張り付いたまま動かない。


「暖乃!」

名前を呼ばれた瞬間、ドンッと鈍い音がする。

直後、私の身体は横から抱きかかえられるようにしてアスファルトを転がった。