「ほら、今だっておれに責任転嫁して、はっきりと否定できないじゃん」
「違う」
「違わねーよ。おれ、暖乃のそういう他人に責任押し付けようとするとこ、すげー嫌い」
顔を顰めて、苦々しく吐き捨てた透也の「嫌い」の言葉が胸に刺さった。
「私は、ただ……。結婚の前に、透也も私も自然なカタチに戻したほうがいいと思って……」
考えながらなんとか言葉を紡ぎそうとしていると、透也が蔑むような目で私を見下ろしてきた。透也がそんな顔をするところを、私は今まで見たことがない。
「自然なカタチって何? おれのことがもう要らないなら、初めからはっきりそう言えよ」
透也がうんざりしたように言ったのと同時に虚ろな表情になった一貴さんの腕の力が抜けて、抱き上げられていた身体が床に落ちた。
「痛っ……」
廊下にひっくり返った私の頭上を、本来の姿に戻った透也が飛び抜けていく。
「透也!」
慌てて呼び止めたけど、透也は私を振り返りもせずに、玄関のドアをすーっとすり抜けてしまった。



