一貴さんは、透也がいなくなったあとの辛さを埋めてくれた人なのに。透也への気持ちごと私を受け入れてくれたのに。

こんなカタチで、入籍してしまっていいの――?

亡くなった透也に感じていた純粋な恋心や、一貴さんにたいして持っていた穏やかな優しい愛情が、いつのまにか歪んでしまっているような気がして。焦りと不安で心臓がバクバク鳴った。


「ねぇ、透也。本当にこのままでいいと思ってる……?」

「暖乃こそ、あんだけおれを受け入れといて今さらじゃない? 途中で手のひら返すくらいなら、初めっからおれのことなんて受け入れるなよ」

「そんなこと言われても……」

「おれが無理に迫ったからだって言いたいの?」

ドキリとして頬を痙攣らせると、透也が自嘲気味に笑った。


「暖乃って結構流されやすいよな。結局、千堂との結婚を決めた理由だって、おれが死んだあとに優しくしてもらったからだろ。そこに本当に暖乃の意志はあったわけ?」

「どうしてそういう意地悪な言い方するの?」

思わず涙目になってしまった私に、透也が冷たい視線を向ける。