「透也、今週末の土日。どっちかで透也の実家に行こうか」

私を抱っこして勝手にベッドに運ぼうとしている透也に声をかけると、廊下で立ち止まった彼が不機嫌そうに私を見あげてきた。

「なんで?」

「何度も言ってるけど、やっぱりこういうのはよくないよ」

「だから、今さらだろ。おれに抱かれて悦んでるくせに」

「そんな言い方やめて。一貴さんの身体だよ」

「でも、中身がおれだって思うから、感じてんだろ」

意地悪く笑う透也の言葉をキッパリと否定できないから憎たらしい。


「一貴さんとの入籍日も、迫ってる……」

真剣さが伝わるように低い声で言うと、透也は私の目をじっと見てから鼻先でふんと笑った。

「だから何? 予定通りすれば?」

また『おれが結婚を阻止する』なんて言い出すかと思ったけれど、透也から返ってきた言葉は案外あっさりとしていた。


「そう思ってくれるなら、透也は家に戻ったほうが……」
「おれが戻る必要ある?」

「え?」

「暖乃は千堂と予定通り結婚しろよ。おれはこいつの身体借りれば暖乃に触れられるし。暖乃だって、おれに触られて悦んでるんだし。このまま現状維持でいいじゃん」

「何言ってるの? それじゃ、一貴さんは……」

私のせいで、私と透也に利用されることになってしまう。