一貴さんのなかに透也が入れば、すぐ気付く。

透也のキスの仕方や触れ方は、一貴さんのものとは明らかに違うから。最初は私も、透也に抗えずにいたけれど……。

透也が一貴さんのなかに入る回数が増える度に、このままじゃダメだという気持ちや罪悪感が強くなってくる。

透也が何度も一貴さんのなかに入るせいか、この頃一貴さんがぼんやりしていることが増えたのだ。


「この頃、ときどき記憶が飛ぶんだよね。暖乃といるときは特に……。疲れてるのかなー」

仕事の合間に一貴さんがぼそりとつぶやくのを聞いて、ふと一抹の不安が過った。 

このまま透也のことを容認していたら、いつか一貴さんの身体は本当に透也に乗っ取られてしまうかもしれない。

嫉妬心で安易に一貴さんの身体に入ってしまう透也は、そんなことまで深く考えてはいないのだろうけど。

このままでは、一貴さんにとっても透也にとってもよくない事態になるかもしれない。

それに、透也のことをずるずると受け入れているうちに、一貴さんとの入籍日が迫ってきていた。
 
やっぱり、透也との決別を考えなくては……。

最近の私は、そのことを真剣に考えるようになっていた。

透也の身体が私のそばを離れられないのなら、私が連れて帰るのはどうだろう。