「ごめん。やっぱり、嫌なことしたのかな?」

「いえ、一貴さんは何もしてません」

実際に、明け方近くまで私を翻弄し続けてくれたのは透也だ。

枕の上でゆるりと首を振ると、一貴さんはようやくほっとしたような笑顔を見せた。


「よかった」

一貴さんが、私の額に軽くキスする。

何も知らない一貴さんに優しい笑顔を向けられると、ひどい罪悪感が湧いてくる。

このままではダメだ。

結婚して夫婦になるのに、一貴さんには話せない秘密がまたひとつ増えてしまった。

これ以上秘密が増える前に、透也の手を離さないといけない。

それなのに、身体にはひさしぶりに透也に愛された疼きがいつまでも残ったままだった。