翌朝目を覚ますと、先に目覚めていた一貴さんがこめかみを押さえながら「んー」と、気怠そうに小さく唸っていた。


「一貴さん?」

様子を窺いながら慎重に訊ねると、一貴さんが「おはよう」と微笑みかけてくる。

上半身裸でブランケットに包まって眠っていた一貴さんは、少し訝しげな顔でベッド脇に落ちていたスウェットを拾うと袖を通した。


「暖乃、ごめん。俺、昨夜のことを途中からあんまりよく覚えてなくて……。暖乃に嫌なこととかしなかった?」

一貴さんが不安そうな顔で訊ねてきたけれど、私は一貴さんがいつもの彼であることと、彼が昨夜の記憶を覚えていないことにほっとしていた。

昨夜、私は一貴さんの中に入った透也と肌を重ねて、そのまま意識を失うように眠ってしまった。

一貴さんが上半身裸だったのはそのせいだし、私がパジャマの上しか身に付けていないのもそのせいだ。

朝になって覚醒すると、透也に流されるままになってしまった自分が恥ずかしくなってくる。

当の透也はというと、私の隣で堂々と両腕をあげて仰向けに寝ていた。私にしか見られていないせいか、生きているとき以上に警戒心がなさすぎる。

ため息を漏らすと、一貴さんがそれに反応して肩を揺らす。