暁のオイディプス

 「ほら、だから言ったのに」


 その後ようやく有明に追いつき、並走を再開した直後。


 空模様があやしくなってきた。


 真夏の入道雲が急成長し、太陽の光を脅かす勢いだ。


 急な夕立が来そうだ。


 昼間はあんなに快晴だったのに。


 「早く帰ろう。さもないとずぶ濡れになってしまう」


 「もう少しで京の都なのに」


 有明はなおも前に進もうとしたが、


 「この先は浅井の領地、その先の六角の領地を越えてようやく都の入り口が見えて来る。その頃にはもう明日の朝だぞ」


 近そうで、実際にたどり着こうとするとはるかな道のりが存在することをようやく悟ったのか。


 有明はようやく引き返すことに同意した。


 しかしすでに手遅れだったようで、入道雲が太陽を隠し、辺りはみるみる暗くなってしまい、雨粒の落下を感じた。