「……まさか」


 城を出て、土岐家の館へ向かって馬を走らせている最中に気が付いた。


 もしかして病とは仮病で、私との文のやりとりが嫌になったとか。


 断る口実に、病を理由にしているだけなのかも?


 急に不安になってきた。


 あの高貴で教養の高い姫君のことだ、私との交流に対して退屈に感じていたのかもしれない。


 しかし面と向かっては言えず、遠回しに止めようとしているのか。


 悪いほうへ悪いほうへと考えてしまう。


 そうこうするうちに、雪はますます降りしきってきた。


 気温はさほど低くはないので、粒の大きい湿った雪。


 髪も着物も濡れてしまい水浸し。


 道のぬかるみもひどくなってきて、馬が脚を滑らすため降りて歩くことにした。


 「うわっ」


 今度は私が足を滑らせて転倒してしまい、完全にずぶ濡れになってしまった。


 それでもひたすら、土岐館へと向かって歩み続けた。


 有明姫に会うために。