美香はカーストトップの女王様。


側にひっついているだけで、なにかと役得がある。


ブランド品を貸してもらったり、新しくオープンするお店のチケットをくれたりと、私にとっては価値があるんだ。


SNSをやっていない美香は、いつも呆れた感じで私が写メを撮るのを見ていた。


まぁ、そのうち私が逆転しちゃうけどね。


「帰りにカラオケ行かない?」


まどかが誘ってくる。


「こないだの歌の動画、再生数がめちゃくちゃ伸びたんだよね、ほら」


「すごーい。まどか歌うまいもんねー」


にっこりと笑ってみせる。


私のパフェとは比べ物にならないくらいの、再生数。


モデルの仕事をしているまどかは、SNSも私と同じくらい活用していて、歌をうたう動画がここ最近では調子がいい。


「でもごめーん。ちょっと用事あるから」と断った。


あんたの撮影役にだけははされたくないんですけど。


美香はともかく、まどかにだけは負けたくない。


はぁあああー、ムカつく!


なんで私が、あいつの下っ手くそな歌に負けんのよ!


ムカつくムカつくムカつくムカつく!


1人で廊下を闊歩していると突然、目の前に何かが飛び出してきた。