『だって、中学生のくせにブランドの財布なんて生意気なのよ。でも盗ったはいいけど、限定品だから売るとバラる恐れがあるし』
『なにをそんなに驚いてるの?』
『だってあなたは、その為に存在しているようなものでしょ?』
『クラスが円滑にまとまるための、サンドバッグみたいなものかしら?』
『財布を盗ったのはあなた。これからもおとなしくいじめられるのも、あなた』
『もう私はこんな仕事から解放されるの。せめてそれまでは面倒事を増やさないでね』
「な、なんだこれは!?」
声を荒げたのは、夫の父親だった。
校長まで立派に勤め上げた、教職のかがみ。
そこに加勢するのは、結婚という女の幸せとは無縁の田所だ。
「なんてひどいの!教師の風上にもおけない…あなたそれでも担任なの!?信じられないわ、服部先生が陰で生徒をいじめていたなんてっ!」
私に指を突きつけて、糾弾する。
「信じられない…」
ボソリと、新郎が呟く。
私の夫となるはずの、エリート証券マン。
「ち、違うの。これは違うの!」
「なにが違うんだ!君があんな悪魔みたいな女だったなんて…」
「お願い、私の話を──」
「こんな結婚やめだ!君とは別れる!」
新郎が立ち去っていくと、披露宴は喧騒に包まれた。
私の幸せが、音を立てて崩れていったんだ…。