「ぐぶっ…ぐっ!」


「メイク落としてやってんだから静かにしなよ!」


まどかに頭を押し込まれる。


便器の中に。


「やっっ……がはっ!」


「いいの撮れてるよ!」


カンナの声が、女子トイレ室に響き渡る。


どれだけ抵抗してもムダだった。


もう、理由はわからない。


ただ、私がカースト底辺だということ。


ううん、違う。


こいつらによって、分けられたんだ。


「私がメイク落とししてあげる」


美香が持っていたのは、トイレのモップだった。


それを私の顔にグリグリと押し当てる。


「や、やめて!」


「だから喋るなって!」


「うゔっ!」


思わず、飲み込んだ便器の水を吐き出してしまった。


「うわっ、汚っ!」


まどかとカンナが飛び退く。


「それも掃除してあげるから」


美香がモップで吐物を拭き──それを私の顔に押しつけた。


「あんたの顔もゲロみたいなもんだからいいよね」


そう言って微笑む美香は、それでもやっぱり綺麗で。


もし私があの顔なら…。


あの顔で生まれてきていたら。


私は「される側」ではなく「する側」だったんだ。


もしあの顔なら…。