起きるのが遅かったということで、学校まで車で送ってもらうことになった。
運転手つきの高級車は、滑らかに発進した。
お屋敷のような豪邸が遠ざかっていく。
未だに夢のようで、足が浮いている。
でも──これは夢じゃない。
私は城崎美香だ。
制服に着替える時、かなりの間、鏡に映る完璧な裸体に見惚れていた。
美しいとしか言いようのない、モデル体型。
女の私でも、その大きな瞳に見つめられたら力が抜けてしまう。
美香が、私を見つめている。
ううん、そうじゃない。
「私が──美香よ」
声までが、美香そのもの。
「お嬢様、着きました」
運転手が恭しくドアを開けてくれた。
校門に横付けした車から、細い足を静かに下ろす。
「お嬢様?」
いつまでも車から降りない私を不思議に思ったのだろう。
「あ、ありがとう」
運転手に礼を言って、とうとう学校に降り立った。
カーストトップの女王様として。
大丈夫だ。
どこから見ても、私は美香にしか見えない。
まさか中身が、あの底辺の奥田夕子だと誰も気づかないはず。
だから大丈夫…。