「あぁ、気持ち悪い!」


すぐに美香が、足で優作を突き飛ばす。


「こ、これでデートしてくれるんだろ!?」


床に転がされてもまた、美香の足首にすがりつく。


騙されたことより、その姿がショックで──。


「わかったから、誰か来ないか見張りなさい」


そう命令されると、優作は嬉しそうに教室から出て行く。


それをぼんやりと見ていた私は、まどかの声で我にかえった。


「あんた、自分の顔とか鏡で見たことあんの?」


小馬鹿にするよう、鼻で笑う。


もし私がまどかなら、ずっと鏡を見ているだろう。


モデルになるほどの美しさがあれば、永遠に見ていられる。


「騙された感想を一言!」


カンナがスマホで撮影している。


もし私がカンナなら、ずっと自撮りをするだろう。


他人を撮るより、自分を撮って安心したい。


「ねぇ、どうして死なないの?」


美香が不思議そうに私を見つめる。


もし私が美香なら、もっと優しくなるだろう。


恵まれた美貌があるんだ、他人を痛めつける必要なんてない。


誰かを傷つける必要なんてないじゃないか。


それなのに──。


「早く死ねば?」


美香は私に『死ね』と言う。