「お前とキスとか、マジで口が腐るっていうの!」


そう言って、優作が唾を吐く。


私を励ましてくれたその口で。


私を勇気づけてくれたその口で。


私を──。


「これで分かった?自分の立場が」


カーストトップに君臨する、女王様。


「なにをどうしても、底を這いずり回るしかないのよ。絶対にそこからは上がらないんだから。そのことを教えてあげようと思って」


美香が軽く微笑む。


「こ、これで俺とデートしてくれるんだろ!?」


「デート?」


「こいつを騙して惚れさせたら、俺とデートしてくれるって約束だったじゃないか!」


優作がひざまずき、美香の足元にひれ伏す。


その姿は、まるで奴隷だ。


「私、そんなこと言ったかしら?」


「い、言ったじゃないか!だから俺はこんな奴と──」


奴隷が女王様の足にすがりつく。


「それじゃ、この靴を舐めたらデートしてあげる」


「えっ、ほんとか?」


「ちゃんと舐めたらご褒美あげるから」


奴隷の口元に足を突き出すと、優作がゴクリと唾を飲み込んだ。


お願い、やめて。


そんなこと、やめて。


裏切られたにも関わらず、私は心の中で願った──。


でも次の瞬間、優作は美香の靴を舐め回したんだ。