聞き覚えのある声が、急に近くで弾けた。


「お前のキスとか、目が潰れるって!」


まどかが顔をしかめる。


「だよね。再生数も伸びないかなー?」


スマホを片手に、カンナが首を傾げた。


いつの間にか、誰もいないはずの教室に2人は──いや、3人が現れたんだ。


「まさか、本当に好かれてるとでも思ったわけ?」


腕組みをして私を見下ろす美香。


「な、なんで…」


「まだわからないの?」


「なんで──?」


私は、目の前に立っている優作に尋ねた。でも優作は──美香のほうを見ている。


これは、どういうこと?


なにかの間違いだよね?


ねぇ、そうでしょ?


「早く説明してあげなさいよ」


美香が優作に微笑みかけると、ようやく私の方に向き直る。


その顔は、よく知っているものだった。


カースト底辺の虫を軽蔑する、あの特有の顔。


そして優作は言ったんだ。


私に愛の言葉を投げかけたのと同じ口で。


「俺がお前なんか相手するわけないだろ」


と。