「私になりたいなんて、嬉しい」


優しい笑みを浮かべて、机までやってきた。


その美しさが眩しくて、私は顔を上げられない。


「夕子、ありがとう」


「──えっ?」


「でも、2度とそんなこと思わないでね」


そう言って、美香は持っていたペットボトルの水を私の頭にかけた。


とてもゆっくりと。


「夕子みたいな底辺にそう思われるのは、私の価値が下がるから」


「そうだよね!やっぱり厚かましい!」


まどかも持っていたペットボトルを、私の頭の上で真っ逆さまにした。


炭酸だ。


甘い香りが鼻をつく。


「ちょっと撮り損ねた!もう一回やってよ!」


カンナが、見ているだけのクラスメイトに飲み物を要求する。


「ああそれから、一つだけ教えてあげる」


もう美香は、笑ってなどいなかった。


あのウジ虫を見るような目で私を見下ろしている。


「もし私が夕子なら今すぐに──死ぬかな」


今すぐに、死ぬ。


「そんな顔じゃ耐えられないし、ずっと底辺にいるくらいなら死んだほうがマシでしょ?」


死んだほうがマシ。


「ねぇ、夕子」


ねぇ、夕子。


「なんで生きてるの?」


なんで生きてるの?