「夏休み、ママとフランスに行くかも」


美香の言葉に、取り巻きの2人が大袈裟に騒ぎ立てる。


誰もが認める女王様。


もし私が美香なら、すぐにでも優作と付き合えるのだろう。


優作も、私なんかより、美香のほうが嬉しいに決まってる。


セレブでなくてもいい。


綺麗でなくてもいい。


でもせめて『普通』で生まれたかった。


びくびくと怯えることなく、自分のテリトリーは自分で守ることができる。


そんなカーストの真ん中が良かったのに──。


「ねぇ、なに見てるのよ?」


美香が冷たい目で私を見ていた。


「こっち見るなって!私までブスになるから!」


ドンっ!とまどかが机を叩き「土下座動画でも撮ろうかなー?」とカンナが立ち上がる。


「財布を盗んだみたいに、この私のことも盗みたいとか?」


薄っすら微笑む美香は、私でさえ見惚れるほど綺麗だった。


だからつい、本音が出たんだ。


「あなたに…なれたらって」


それは心からの称賛でもある。


決して叶うことのない、けど叶えたい私の夢。


「はぁー!?なに言ってんの?美香になりたいとか厚かましい!」


「私は嬉しいわ」


まどかを制して、美香がゆっくり近づいてくる。