「あっ、ごめーん!」


まどかがドンっとぶつかってきた。


床に倒れ込んだ私の手のひらを、カンナが踏みつける。


「いきなり私の前に倒れるんだもん」


2人に痛めつけられても、歯を食いしばって耐えればいい。


いつかは終わる。


いつか飽きるから。


大丈夫だ、私ならできる。


だって私には──。


「ねぇ、なにかいいことあった?」


美香が屈んで、私の顔を覗き込む。


「さっき少し笑わなかった?」


「わ、笑ってなんか…」


「なんか余裕がある感じがする」


さっと立ち上がり「ちょっとムカつくかも」と続ける。


「夕子のくせに生意気!」


まどかが私を蹴り倒す。


「もっとイジメちゃおうよ!」


カンナがスマホを取り出した。


それから3人に女子トイレに押し込まれ、水責めをされたけど──。


私は平気だった。


放課後、ジャージに着替えた私は「大丈夫か?」と言う声に振り返る。


秋元優作が、私に声を掛けてくれたんだ。


「うん、大丈夫」


「またあいつらだろ?いじめなんて下らない」


「でも大丈夫だから」


そう言って笑った。


うまく、笑えてるかな?