私の両親はとても厳しかった。


テストでは100点を求められ、常に学年のトップで居るようにと育てられたんだ。


参考書をいつも小脇に抱えている、度の強い眼鏡をかけた私は、すぐにいじめのターゲットとなる。


しかし、口が裂けてもそれを親には言えない。


ただジッと、耐え忍ぶのみ。


その風向きが変わったのは、中学2年の時。


『ここ、教えてくれない?』


気さくに声を掛けてきたのは、奥田夕子だった。


カーストのちょうど真ん中にいる夕子と親しくなることで、底で這いつくばっていた私は引き上げられる。


何人かの友達に囲まれ、平穏な日々を過ごす。


でも、カーストは『絶対』だ。


必ず存在する。


大勢の中に紛れ込んだつもりだったのに、カーストトップの城崎美香が目ざとく私のことを見つけた。


トップグループである、まどかやカンナからのイジリが始まり___やがてそれは、明確ないじめへと発展していく。


私にはどうすることもできない、いつものパターン。


せっかくできた友達も、波が引くように離れていった…。


夕子を除いて。


「下らないこと、やめたら?」


私へのいじめを、夕子は『下らないこと』と断言して庇ってくれた。


美香が、冷たい目に光を宿している。


新しい獲物を見つけたように。