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ぐちゅ。
ぐちゅ。
ハサミが肉をえぐる音だけが、教室内に響く。
着ているものを真っ赤に染めた夕子が、何度も何度もハサミを振り下ろしている。
「私が美香なのよ!」
と…。
いきなりロッカーの扉が開いた時には、私もびっくりした。
まさか、あんなところに潜んでいたとは。
それってつまり、全員が登校する前から、雑巾臭いロッカーに隠れていたということ。
それを思うと、本当に哀れだ。
ただでさえ地味で個性のない顔が半分、焼けて爛(ただ)れている。
狂気に取り憑かれたように、美香の胸元に刃先を突き刺して笑っていた。
「あはははははは!」
思わず耳を塞ぎたくなるような笑い声が、すぐ側の私の耳にも届く。
その時、美香が私の方を見た。
なにか助けを求めるような眼差しは、すぐに光を失くす。
「美香っ……じゃ、ない」
という、最後の言葉だけを残して。
「えっ!?」と、夕子の動きが止まった。
「ど…どういう、こと?」
唖然とする夕子に向かって、私は指を刺す。
「ひ、人殺し!人殺しよ!」
一斉に男子たちが飛びかかり、騒ぎを聞きつけた先生たちに取り押さえられた夕子。
「私は美香よ!」
虚しい訴えだけが、教室に取り残された。
これで、私の復讐は終わったんだ…。