俺は城崎美香の『奴隷』だった。


俺にとって美香は、まさに神様であり女神だった。


女神様にみそめられるなら、どんなことでもやってきたんだ。


夕子を惚れさせてキスをしたのも全て、美香のため。


ご褒美に足を舐めさせてくれた。


でも、それだけだ。


ここ最近は声を掛けても、知らんふり。


俺がどれだけ美香のことを求めていても、俺は女王様の眼中にない。


いいように扱われ、小間使いにされ、捨てられる。


ところがどうだ。


美香の後をつけ回していたら、とんでもない場面に出くわした──。


これって、チャンスじゃないか?


──美香が、目を見開いて俺のことを見ている。


初めて、俺のことだけを見ていたんだ。


「ま、まどかが飛び降りて…」と言うと、俺の横を駆け抜けていく。


その手を、がっちり掴む。


勝手に触ることなど、決して許されていない。


「は、離しなさいよ!」


「いいよ」


パッと手を離した代わりに、スマホを突きつけてやった。


まどかが美香に追い立てられるように、窓から転落していく様子がしっかりと写っている。


「これ、公開してもいいんならな」