「ほら、食えよ!」


私は、金本ひろ子の口に団子を押し込んだ。


団子といっても、泥団子だ。


「うぐっ…!」


口の周りを泥だらけにして、ひろ子が咳き込む。


「まだ残ってるけど?」


「ど、どうしてこんなことするの!?」


「どうしてって…そんなの決まってるじゃない!」


「えっ?」


「理由なんてないわよ」


グチャっと、鼻の頭に団子をねじつける。


けれどすぐにひろ子は、手を払って逃げていった。


カンナがいないと、なかなか取り押さえておくのが難しい。


「美香も手伝ってよ」


ずっと傍観している美香に、苦情を込めて言ってやる。


「えっ、私?」


「美香しか居ないじゃん。いじめるんなら協力してくれないと」


「でも…」


「なに?急にいじめをやめたくなったの?これまで散々、夕子とかいじめ抜いてきたのに?どういう風の吹き回し?」


そう言って問い詰めると、美香は黙り込む。


「いつもの美香なら、もっとやれって言うけど?あっ、それとも…美香じゃなかったりして」


ピクッと、整えられた眉が動いた。


「──どういう意味?」


「そのままの意味だけど?」