パチンコに勝つわけがなく、財布も空になる。


「くそっ…!」


色んな意味で毒づいていると、曲がり角で誰かが飛び出してきた。


「どこ見てんだよ!」


「す、すみません!」


「あーあ、骨が折れたかもね!」


大袈裟に顔を歪め、立ち上がる。


「ほ、本当にすみませんでした!」


まだ若い女が深々と頭を下げたので、いいカモだと付け込むことにした。


「申し訳ないと思うなら、誠意を見せな」


「…誠意?」


「あんたが考える誠意って意味だよ!」


あたしが声を荒げると、女が財布を取り出す。


ふん、一人前にブランド品じゃないか。


ガキからお金を巻き上げるくらい、容易いんだよ。


「あ、あの…これ」


差し出す万札に「それっぽっち?」と眉をひそめる。


「あの、これで許して下さい…」


今にも泣き出しそうな顔は、腹が立つくらい綺麗だった。


夕子もこの子くらい可愛かったら、人生が違っていただろうに。


そういえば、この子も制服を着てる。


「まぁ、いいわ。これからは気をつけなよ」


「あ、ありがとうございます!」


再び頭を下げる女の子を見ていると、なんだか良いことをした気分になった。