なにも初めっから憎かったわけじゃない。
生まれた時は、可愛かったんだ。
あたしに似た女の子。
でも子どもは、生んで終わりじゃなかった。
きちんと育てないといけない。
ミルクをやっても、おしめを替えても泣き喚く娘。
いつしかあたしは、夕子のことを疎ましく思うようになった。
教養もないあたしが子どもを養っていくには、体を切り売りするしかない。
水商売にどっぷり浸かり、男と酒に依存し、人生がうまくいかないことを、娘のせいにする。
『お前さえいなかったら!』
そんな呪いの言葉を吐かないと、生きていくことができなかった…。
そして今、あたしは娘を売った。
そうすれば、男はあたしから離れないと約束してくれたから。
しばらくアパートの外で様子をうかがっていると、すぐに夕子の悲鳴が聞こえてきて…。
これからは、若い娘に稼いでもらおう。
これまで育ててやった恩義があるんだ。
母親のあたしに恩返ししてくれてもいいじゃないか!
パチンコを打ちながら、あたしはそう言い聞かせていた。
そうでもしないと、さっき聞いた夕子の叫び声が耳に蘇ってくる。
あたしは悪くない、あたしは悪くない、あたしは悪くない、あたしは悪くない、あたしは悪くない、あたしは悪くない悪くない悪くない悪くない悪くない!