「早く起きな!」


そんな声と同時に、背中に激しい衝撃を受けた。


慌てて飛び起きると、目の前に見知らぬ女が仁王立ちしている。


「一体いつまで寝てんだよ!朝飯はどうした!?」


「あ、あの…?」


「まだ寝ぼけてんのか!それじゃ、あたしが目を覚まさせてやるよ!」


女が持っていたコップの水を、私の顔にぶちまける。


「ひぃっ!」


「早く飯!さっさと作れよ!」


布団から引きずり出され、あまりのことに言葉が出ない。


これは夢か?


なんで私が、こんな豚小屋みたいな部屋で目が覚めるの?


それに、この小汚い女は誰?


ふかふかのベッドは?


ママは?ママはどこなの!?


尋ねようにも、女は不機嫌そうにタバコを吸っている。


よろよろと立ち上がり、洗面所のようなところに逃げ込む。


──えっ?


チラリと、視界の端に何かがよぎった。


見えちゃいけないものが、見えた気がしたんだ。


それは、鏡。


ろくに掃除もしていない、垢のついた鏡に恐る恐る近づいていく。


ち、違うよね?


さっき見えたのは、私なんかじゃない…はず?


そこに写っていたのは、紛れもない奥田夕子だった。