すると、美香が動いた。


「そのスマホ…?」


声を掛けているのは、ガリ勉の金本ひろ子だ。


いつも机にかじりついて、参考書と睨めっこをしている貧乏くさい女だ。


「あっ、それ最新のスマホじゃないの?なんでお前がそんなの持ってんの?」


私が手を伸ばすと、ひろ子は激しく抵抗する。


「はぁー!?生意気なんだけど!」


髪の毛を引っ張ると、教室内の空気が変わった。


そうだ、私はカーストトップグループにいる。こうやっていじめる力もある。私のことを整形なんて言う奴は、同じ目に遭わせてやるから!


「い、痛っ!」


「これからあんたまた、次のターゲットだから」


「な、なんで私が!?」


ひろ子が涙目で見上げてくる。


すると美香が「私が決めたの」と、薄っすら微笑んだ。


それだけで、ひろ子が絶望に打ちひしがれていく。


「じゃ、そういうことだから」


とりあえず挨拶代わりに、参考書をゴミ箱に捨ててやった。


やっぱり、いじめは気持ちいい!


私に力があるのだという、手っ取り早い証明になる。


こいつも夕子みたいに、いじめてやろう。


ふふっと微笑む私は、気づいていなかった。


その後ろで、美香が睨んでいることに…。