すれ違うひとが皆んな、私のことを撮っている。


写メだけじゃなく、動画で追いかけてくる奴もいた。


スマホから逃げ惑い、ようやく家にたどり着く。


まだ両親は帰ってきていない。


ドアを閉めると、その場にずるずると崩れ落ちる。


しかし、ドアを一枚隔てているだけで、こんなにも守られてる気になるなんて…。


とんでもないことになった。


表のアカウントも削除したけど、あの動画はまだ拡散されている。


しばらくは外に出られない。


でも、人の噂なんてそのうち終わる。


私が夕子をいじめって、別に夕子が自殺したわけじゃないし、捕まることはないはずだ。


とりあえず汗をかいたのでシャワーを浴びて、ベッドの上で横になると、ようやく心からホッとした。


大丈夫だ。


なんの心配も──。


チャイムが鳴った。


誰だろう?


面倒なので居留守を使うことにしたのに、チャイムは鳴り止まない。


まるで、私がここに居ることを知っているかのような…?


仕方なくモニターで応答する。


「──はい?」


「丸井カンナちゃんだよね?」


見知らぬ男が、モニターに映っていた。


「だ、誰ですか?」


私が問いかけると、男がにーっと笑う。


「僕のこともいじめてよー!」


「ひぃっ!」