「ゆ、夕子!?」


「カンナっ!」


目を充血させた夕子が、私にしがみついてくる。


「ちょっと、離して!」


「私、美香なのよ。夕子じゃないの!」


「あんた、まだそんなこと言ってんの?てか、臭いんだけど!」


なんとか体を引き剥がし、睨みつける。


何日も体を洗っていないような異臭が、夕子の体から漂っていた。


「私の家に帰ったのに、あの女に通報されて、それでこいつの家に連れてかれて…風呂もご飯も。お、お願いカンナ…わ、私は美香なの!」


「気持ち悪いって!もう向こう行って!」


逃げるようにトイレに飛び込むと、夕子が後を追いかけてくる。


「お願い、信じて!」


「いい加減にしてよ!あぁ、ムカつく!」


私は夕子を個室に押し込み、閉じ込めた。


ホースを水道とつなぎ、スマホを片手に扉を開けて水をぶっかける。


「や、やめてっ!」


鬱積していたイライラをぶつけるように、水責めをするのは___いい動画を撮るためだ。


もういいかな。


動画の尺が撮れると、あっさりとその場を離れる。


夕子になんか興味はない。


バズりそうなものが撮れたら、それで満足なんだ。


スマホから、あるアカウントを開く。


【いじめっ子CLUB】


それは、私の裏アカウントだった。