結城くんと青春したい!



席の横の通路を箒を持ったクラスメイトが通り過ぎる。

教室はまだ今週の掃除メンバーもいて、1人残されたわけじゃない。

「さっきホームルームの時話しかけちゃったの悪かったな、

部活始まる時間までになっちゃうけど俺なんか手伝おうか?」

帰り支度が終わったのか桐島が前から声をかけてくれる。

「だ、大丈夫!もう日誌書き終わりそうだし!」

さっきの会話の歯切れの悪さを引きずってしまって少しぎこちない私の返事。

「でも……」

空気にいたたまれず思わず視線を日誌に移したけど
こちらに近づく足元が見えて顔をあげる。

何か言いたげな桐島と目が合う。

ん?と首と傾けると桐島が何かを言おうとして、
それと同時に廊下から「桐島ー今日最初ミーティングだって、部室行こうぜ」と他クラスの人の声が聞こえた。

桐島は自分を呼んだ人に手を挙げて反応したあと
「あ……いや、そっか」と申し訳なさそうに私に笑いかけた。

「また明日な」「うん」

手を振って教室を出ていく桐島の後姿を見送りながらハッとする。

もしかして、今みたいなのから彼氏彼女に発展するんじゃないの……?

優しく手伝おうとしてくれたし、
私だって話しやすいな、なんて思ってるし。

こういう機会を逃しているから恋人が出来ないんだ。

でも今みたいな場合、部活行くところを足止めしちゃうのも嫌だし……なんて、
日誌を書く手が止まってううーんと考え込む。


漫画って最初からこの二人が主人公と相手です!って決まってるじゃん。
新連載が開始すると最初の扉絵で大体主人公と相手が描かれてるよね。

そんな感じで私もわかればいいのに、この人があなたの相手ですよって!

漫画のように、
わかりやすく恋が始まるきっかけが起きてくれないかな。

ふと、朝自分が言った言葉を思い出す。

『困っているときに助けてもらったり
放課後誰もいない教室でふたりきり、とか――』

そんな状況に置かれたらきっと思わず青春加減にときめいて仕方ないと思う。

相手は別に漫画のヒーローみたいなイケメンじゃなくてもいい。

そりゃ結城くんみたいに好みの人だったら尚更嬉しいけど……

って、なんで結城くん!?

急に思考に登場したクラスメイトの名前。

現実に帰ってきて気付くとなぜか戻した視線の先に結城くんが。

しかもめっちゃこっちを見ている。

「瀬崎さん――」

え、え、近づいてくる!なんで!?