――「ごちそうさまでしたー」
昼休みになりいろんな人の話声が行き交う賑やかな教室。
家から持参したお茶の入った水筒に口をつけながら、
ふと甘味が恋しくなり
「ちょっと飲み物買ってくる!」
食べ終わったお弁当箱を入れた巾着を結びながら席を立つ。
「いてらー」
新発売されたリップの話で盛り上がっていた3人に見送られて
いつも同様4人で机を合わせて昼食を食べていた教室を1人出る。
購買の方はこの時間混んでるから1階の自販機行こうーっと。
ほんの少し遠回りになるけど混んでるよりいいもんねと
お財布だけを持って中庭の景色を見ながらぼーっと足を進める。
クラスも学年も違う見知らぬ人とたくさんすれ違うなかで
朝の『もっと積極的にいろんな人と関わりにいかなきゃ』という栞の言葉を思い出す。
そうはいっても、冷静に考えると“心の底から好きな人”がほしいんじゃなくて
ときめくイベントや恋人とする定番なことに憧れてるだけなんだよね。
中学の時は
2年の時からレギュラーになって部活に精いっぱいで
好きな人とかそういうの考える時間もなく気づいたら引退。
間も無く受験や卒業って意識する時期まで浮ついた話はゼロ。
だから周りの友達から聞く文化祭での告白とか初デートでの緊張とか
そういう青春なことが羨ましかった。
それで焦燥感が急に湧いてきちゃって
みんながかっこいいって言ってて目についた人を“好きな人”だってことに。
その人の自信家で強気な感じが
当時ハマってた漫画のヒーローに似ているってだけで
‟この人と付き合えたら漫画みたいなキラキラな学生生活が過ごせる”と思って告白。
あの時はその感情の仕組みに気づいていなかったから
自分が本気でその人を好いていると思っていて、
自分にも好きな人が出来たっていう事実に浮かれて
アピールも告白も全てが自己満足。
その結果相手にすらされなかったけど。
だから実をいうと人を好きになるって感覚をよくわかっていない。
それなら現実で理想をかなえようとするハードモードより、
漫画読んで綺麗な恋物語を楽しめたらいいやって思っちゃったんだよなー。
私だって漫画みたいな恋愛が現実に簡単に転がっているなんて本気では思ってないし――「結城くん、わ、私と付き合ってください!!」
もう少しで自販機設置場に到着というところで、
震える女子の声が聞こえてはっと意識が現実に戻る。

