「なんか真緒ってそんなに恋愛に憧れてる割には今好きな人いないよね」
栞が思い立ったようにそう言うと
「去年もいるって話聞かなかったな」
去年同クラだった瑠宇も不思議そうに私を見た。
好きな人かぁ、うぅーん……
と言葉に詰まっていると、
「中学の時はいたよね」
私より先に楓花がこたえる。
中学の時の私の『好きな人』。
一瞬当時の記憶がフラッシュバックして心がズキンとしながらも
その動揺が態度に出ないようにさっと「告白して振られた」と伝える。
誰!?と聞かれそうだったから
それっきり高校も別々だしね、と付け加えた。
「えーそっかー」「そうだったんだ」
もう終わった話だからか、栞も瑠宇も軽く流してくれてよかった。
というのも、あまり思い返したくないんだよね……。
「すごくモテる人で、普通にダメだった、あはは」
なるべく自然に会話が終わるようにオチをつける。
「あー、確かにそいつ結構かっこいい方だったかも」
頷いて楓花は当時を思い出すかのようにあごに手を当てる。
「そうなの!?」「イケメンかー」
それを聞いた2人が少し身を前に乗り出す。
やばい、この話続いちゃう!?
深堀りされたくない私は内心何か違う話ないかな――と焦っていると、
「イケメンと言えばこのクラスも悪くないよね!」
栞の言葉に私以外の2人がうんうんと首を縦に動かした。
周りに聞こえないように意識してか、みんな声のボリュームを抑えながらも会話が続く。
「確かに。
彼女持ちだけど逢坂とか、後は桐島もこの前他のクラスの女子に呼び出されてたの見たわ」
「でもなんといっても結城くんだよね――」
瑠宇も楓花も興味が他へうつったようで安心。
すっかり私のことから話題が変わって、
うちの学校は誰がモテるかで盛り上がっている。
ぐいぐい会話に参加しているわけじゃない私だけど、
確かに今名前が挙がった人たちは人気って言われてるの納得するな。
逢坂とか桐島は私でも話しやすいしモテる理由が分かる。
そしてやっぱり圧倒的に結城くんの人気はずば抜けていて、
この前も入学したての1年生達が誰から聞いたのか、結城くんのイケメンっぷりを廊下まで一目見にきていたくらい。
私ももし結城くんくらいかっこいい人とお付き合いしたら、
節々でテンション上がるんだろうな、なんてたまに考えちゃったり――
「――でも、結城くんは実際付き合いたいとかとは違うよね」
私の脳内とは真逆の楓花の言葉に、
みんな一瞬だけ教室入り口に目線を向けた。
「わかるかも、クールすぎてコミュニケーションが難しい……」
コミュ力が高くて色んな男子とも普通に話せる栞ですらそう思ってるようだった。
た、確かに、かっこいいからってイコール付き合ったら楽しいわけじゃないもんね。
私の望む展開的にも
THE青春!ってことを一緒に楽しめる人じゃなきゃ
付き合ったりしたいと思えないし。
「そうだよね、かっこよさは最優先じゃない!優しい人がいい!」
傍観してたのに急に会話に入った私を見て3人とも驚きつつ笑っている。
「もうー、急にびっくりしたっ!」
「あはは!真緒らしいわー」
いくらイケメンだったとしても、
クールな人の場合もし付き合ってからもずっと冷たくされたら嫌だしなぁ。
「私は自分がやってみたいことにたくさん付き合ってくれる人がいいから、
優しいって条件が絶対!」
力強く意気込む私にみんなは小さい子どもを見るような表情を向けてきた。
「真緒の言うこともわかるけど、
そもそも優しさとかそういう内面ってさ自分からコミュニケーション取っていかなきゃわかんないじゃん」
「それなら真緒は漫画読むのもいいけど、もっと積極的にいろんな人と関わりにいかなきゃ!」
なんて。
確かに瑠宇や栞の言うことは正論、かも。
「本気で彼氏欲しいなら待ってるだけじゃダメだよ!!」
楓花の勢いに負けて「わ、わかったよ……」ってとりあえず返事したけど、
確かに実際恋愛に憧れてばかりで何も行動してないしな、
なんて自分でも反省しているところで予鈴が鳴った。

