「……あ、ありがとう!」
「うん」
水筒を受け取り、お礼も言えたのにまだ何か反応を待っているみたいで
首をかしげると
「どの作品だったか、今の伝わった?」
あ、そうか、そうだった。
衝撃的過ぎてすっかりなんの会話をしていたか抜けてしまっていた。
「あっ、うん、恐らくそのシーンってことはあれだ、
『完璧王子様は私を独占したいらしい』かな!
もしよかったら改めて最初から貸すよ!」
「ありがとう」
私も印象的なシーンだったからすぐわかったけど――
さっきの一連の流れを思い出しそうになってまた顔が赤くなる。
動揺を誤魔化すように忙しくなく食べ物を口に運んでみるけど、
サンドイッチの味さっぱりわからん。
「……」
黙々と食べ進めて
何も言葉が出てこない私を変に思ってないか
結城君の方を見ると、
「ん?」
元々こっちを見ていたらしく、
目が合った拍子にくすりと笑いかけてきた。
「う、ううん!!」
「はは、なんかいいねご飯をこうやって食べて過ごすのって」
今までで一番わかりやすく表情がほぐれた様子で笑う結城くんに
心臓が握りつぶされる。
くっ……やばい、かっこいい!
今までのポーカーフェイスの印象から
昨日から垣間見える表情の変化に動揺させられっぱなし。
こんな風にしっかり笑うこともあるんだ。
「ゆ、結城くんって思ったより表情豊かだね」
その言葉に軽く驚いたような返事が来る。
「瀬崎さんほどではないよ」
え、私?
「私ってそんな大げさかな」
「いや、そういう意味じゃないんだけど、
お茶の席では参加するときも招くときも
一つ一つの動作を丁寧にするためにあんまり大きく感情を出したりしないからそのせいかな。
顔にあまり出ないのかもしれないけど、
俺だって笑ったり困ったり、緊張したりするんだけどね」
「結城くんと緊張って無縁そうなのに!」
私がそう言うと
伏し目がちに軽く首を横に振った。
「そんな、今だってすごいしてるよ」
「嘘だー!」
あまりに涼しそうに言うから場を和ます冗談だと受け取ることにした。

