落ち着いたらしい結城くんも、
持っていたおにぎりをほおばり始める。
勝手に読んでしまったこと、私が怒ると思ったのかな。
むしろ漫画の話できるの嬉しいから
読んでみてどうだったかもっとちゃんと聞きたいくらい。
口に含んだプチトマトを噛み終わって尋ねる。
「というか、結城くんの感想気になるな!
あの時は色んな話を1~2巻ずつ貸してたからなーどんな話読んだか覚えてる?」
ペットボトルからお茶を飲んでいた結城くんの喉元が揺れて、
流し目がこちらに向けられる。
なんとも絵になる光景に見惚れてしまうと
少し考え込んだ彼が
「一番キラキラしてるなと思って印象的だったやつは、
とあるシーンで主人公と彼女の好きな男性が向き合って、
ん……言葉で伝えるの難しいな――」
とペットボトルを私のいない方の自分の腰横において、
「そう……こんな風に、
彼女の髪を一束すくって
『お前は俺だけ見てろよ』
って言う、やつ」
言い終わりと同時に
実際に彼の指から私の毛先がするりと抜けた。
再現によりどのシーンだったか説明できて心なしか満足そうな結城くん。
それに対し何か返事をしなくてはと思い口を動かしてもパクパクとなるだけで声が出ない。
結城くんはしばらく何も話さない私にどうしたんだと心配そうな顔を向けた。
「……?瀬崎さん、大丈夫?」
なんて、様子をうかがうように顔を近づける。
余計に動けなくなっている私だったけど
ゴトン、という音でやっと硬直が解ける。
間近に迫る結城くんに驚いて後退りした時に当たった水筒が倒れたらしい。
「あ、水筒が……」
結城くんの視線がベンチの上を転がる水筒へ移って自分から視線が外れると、
私の顔が火が出そうなほど熱くなったのを感じた。
「あっ、いや……!えっと!!ーー」
パニックになり慌てて倒れた水筒を拾おうとして、
「っ!?」
結城くんと手が触れる。
思わず手を引いてしまった私とは対照的に
「はい」
なんでもなさそうに、拾ってくれた水筒をこちらに差し出す。
どの漫画だったか伝えるためにワンシーンを実際にさらっとやって、
そしてこのなんでもなさそうなペース。
薄々気づいていたけど、
とんでもない人を相手に選んでしまったのでは??

