しばしの間目が合う。
急に合わさった視線に恥ずかしくなり、
サンドイッチを口に含み目線をそらすと
その横でさっきまではぽつり、と話し出していた彼が
急に早口になり話し始めた。
「え、えーっと、小学生まで放課後は習い事ばかりで中学も男子校って言ったと思うんだけど、
そもそも俺に男女交際っていう価値観自体がほとんどなかったっていうか!――」
そこまで言うと一度呼吸を整えて、
「で、でも、今年2年のクラスになってすぐに、
瀬崎さんの漫画を勝手に読んでしまったことがあって……」
バツが悪そうに首を傾けてこちらの様子をうかがう。
初夏の風が少し吹いて、不安げに揺れる瞳に
叱られる前の子犬のイメージが被り思わず心臓がぎゅんとなる。
「ま、漫画……?」
私の絞り出した声に恐る恐る結城くんは続ける。
「多分、一旦その場に置きたかっただけなんだろうけど
教卓に置いてあったことが――」
あっ!と思い出す。
2年に進級してすぐの時、
1年生の時に貸していた少女漫画いくつかを
クラスが変わっちゃった子が放課後帰る直前に持ってきてくれた。
受け取った私はその子との話に夢中でとりあえず教卓に置いてそのまま帰ってしまって、
次の日登校して気付くと私の机の上に置かれてた事があった。
「あの日は俺が日直で、掃除のとき黒板を消し終わったときに教卓の上のそれに気づいて、誰のだろうって中身を見たら瀬崎さん宛のメモと漫画が数冊入ってて――」
あの時漫画を私の机に置きなおしてくれたの結城くんだったんだ。
そのままだったら先生に注意されていたかもしれないから助かった。
「俺今まで小説とかしか読んだことないから、漫画にはすごく興味があって。
人を勝手になんてダメだと思ったんだけど、つい手が伸びてしまって……
中高生が等身大に自分たちの思いや気持ちに向き合って、
感情がキラキラした効果とかで表現されていてすごく引き込まれた。
思わず夢中で袋に入っていた分をあっという間に見てしまって
その時に、付き合うとか告白とか色々わかって――
って、勝手に読んでごめん……」
ひどく落ち込む様子の結城くんだけど、
「全……然っ気にならないよ!
むしろ漫画の良さを分かってくれて嬉しい!!」
私がそう伝えると
「よかった」
とやっと柔らかい表情を見せてくれて私もほっとする。

