他にもすれ違うクラスメイトに挨拶をしながら教室の真ん中あたりにある自分の席へ。
窓際では楓花達3人が何かの話で盛り上がっている。
「おはようー!何の話ー?」
鞄を置いて合流すると
「真緒の漫画好きは重症って話ー!」
栞が楽しそうにくすくす笑う。
どうやらさっきの下駄箱での私の様子を楓花から聞いたみたいで、
相変わらずマイペースなんだから、と瑠宇は苦笑い。
高校から友達の栞と瑠宇には、
私が中学時代バレー部でレギュラーで副部長を任されていたと言っても
そんな責任あることを任される真緒を想像できない!と笑われてしまう。
私も自分でだらしないところが多々あるとは自覚しているけどね……。
「だって、今日更新された最新話の展開が最高だったんだもんー!」
私の言い訳は、そこまで漫画好きというほどではない3人には伝わらない。
「それにしてもスマホ画面しか見えてない夢中さ加減は異常だったわ」
さっきの私の様子を思い出しているだろう楓花。
夢中になっちゃうのも仕方ないの!
今ハマっているのはクラスメイトのイケメンといきなり同居が始まっちゃう
甘めの少女漫画。
とことん自分好みの設定、展開で話が進むため
「主人公が夜遅くまでテスト勉強してたら、
文句言いながらイケメンが助けてくれるの!
でも段々ふたりとも眠くなってきちゃって、ハッとするとお互いの顔が近くにあって――!!」
3人は読んでいないからと遠慮なくネタバレして興奮を伝えると
「真緒は恋愛に夢見がち……」
私と対照的な落ち着いた声で瑠宇がため息をつく。
「ほんとほんと、実際はそんな漫画みたいなこと起きないよ」
楓花がそう言うと私以外の2人は頷いた。
「もう、自分たちはみんな彼氏いるからって
わかってるような顔してー!」
私は未だに恋人が出来たことがないからよくわからないけど、
高校生にもなると少女漫画の展開で盛り上がるより
現実の自分たちの恋愛に悩んでいる子がたくさん。
この3人も漏れなくそんな女の子たち。
楓花の彼氏さんは1学年先輩で今年受験生。
希望する大学が私たちの地元から少し遠いため来年から会いづらくなるかもって将来のことを悩んでいる。
栞はずっと片思いしていた幼馴染と付き合い始めて、手をつないだりハグをするタイミングがわからない、と戦力外である私を除いた2人によく相談している。
瑠宇はバイト先で知り合った彼とこの前の連休中旅行に行った際、
親への口裏合わせとして私たちと行ったということにしてほしいと頼まれたり。
大人っぽい内容にいつも私は聞いていて恥ずかしくなってしまう。
かくいう私だって漫画みたいな劇的な出来事は現実ではなかなか起こらないってわかっているけど……。
「で、でもやっぱり憧れちゃうじゃん?
困っているときに助けてもらったり
壁ドンとか頭ポンポンみたいな!
放課後誰もいない教室でふたりきり、とか!!」
みんなにそう話すと
「憧れる気持ちはわかるよ」なんて諭されちゃったりして。

