『俺の彼女』
エコーがかかったように脳内で繰り返される。
彼女。
私が、結城くんの……?
話についていけていない私の様子を見て
恥ずかしそうにこめかみを細い指でかきながら結城くんは続ける。
「えっと……、
告白してくれた子みたいに‟好きだから付き合う”っていうのはまだわかっていないけど、
さっき瀬崎さんと計画建てたことすごく楽しそうだった。
それらを一緒に体験するために関係性に名前が必要なら――」
そのまっすぐな表情からは
友達のまま遊んだりするというような他の選択肢は持っていないようにみえる。
さっき関係性は問わず楽しもうと伝えたつもりだったけど、
私が「彼氏とやってみたかったこと」なんて伝えてしまったから無理をさせているのかもしれない。
「いや、それはっ……!」
友達としてでも十分、と言おうとしたのに一瞬躊躇いの感情に阻まれて
その先の言葉が出ない。
そんなもごもごしている私の顔を見て
結城くんは優しく確かめるようにのぞき込んできた。
「瀬崎さんにとって俺と友達とじゃまた違うんだよね?
俺も瀬崎さんと‟青春“してみたい、
だから俺と付き合ってください」
人生初の告白に
否定しかけていた言葉が完全に飲み込まれた。
恐らく結城くんはこれまた無自覚にド天然の爆弾を投下してる。
わかってる、深い意味はない。
でも正直悪い気がしない。
というかすごいときめいちゃってる自分がいる。
お互いの憧れを叶えるために形だけをなぞる恋人同士ってことで、
そこに恋愛感情は乗っていない。
倫理的にどうなのって感じだけど、
よくわかってない結城くんだからこその提案に
ズルい打算的な私は、
目の前に転がる自分の理想的な状況を手放せそうにない。
「……はい、私でよければ、お願いします」
少しの罪悪感が混じる私の言葉に
「こちらこそお願いします」
それに気づいていないだろう結城くんが頷く。
近くの信号機から青信号を告げる音楽が流れだし
「じゃあ今日は帰ろうか」
すぐそこの駅までの道をふたりゆっくり歩きだす。

