結城くんと青春したい!



「ふぅ……」

こんなもんかな、とスマホのスケジュールアプリを閉じた。

「休日の計画を立てるのは結城くんの予定が分かり次第、
先ずは放課後一緒に帰れる日に色々寄り道してみるって感じで」

「うん、色々とありがとう」

ちょうどアイスティーも最後の一口を飲み終えたところだった。

さっきアップルパイを食べていたとき
物珍しそうにみる結城くんに半分こするか提案をすると一度は遠慮するも
私が包装ごと真ん中で割って差し出すと申し訳なさそうに、
でも幼い子どものように嬉しそうに食べていて、

気に入ったのか
「次また来たらこれ頼む」
と食べ終わりの包装を綺麗に畳みながら言っていた。

それを見て何かくすぐったい気持ちになる。


「……そしたら今日はこんな感じで帰りますか」

親しみがもてたとはいえ、
会話が大盛り上がりということでもなく、
手持ち無沙汰になる前に解散しようと
トレイに空のドリンクカップなどを集めた。

実はさっきからうちの学校、他校含め周りの席の女の子達が
結城くんをチラチラ見る目線が痛いということもあり居心地が悪い。

当の本人はそれら視線に気づいてすらいなさそうなんだけどね。

飲むタイミングを逸していたのか、
最後にアイスティーをストローで大きく飲み込んだ結城くんも頷き答えた。

席を立ちスカートやベストを直し、
「これ、片付けちゃうね」
と慣れないファーストフード店に付き合ってくれた向かいの結城くんに話しかけると
彼は既に支度を終え席を立っていて、

「俺片すよ、瀬崎さんが買って持ってきてくれたんだし」
とトレイを片手に持ったうえに
ナチュラルに私が座っていた椅子を少し引き、恐らく出やすいようにしてくれた。

あまりに流れるような一連の紳士的動作にドキッとする。

「あ、ありがとう」

ここははじめてイートインを体験した結城くんを
自分がリードするような場面だと決めつけていた分のギャップがすごい。

育ちの良さが所作に滲み出ている気がする。

改めて私すごい人と関わりを持ったな……。

現実とは思えないまま先を歩く結城くんの背中を見ていると
一瞬あたりを見回し急にこちらを振り返ったかと思いきや少し困ったような表情で私を見た。

「これ、どこに片付ければいいのかな……」

「ふはっ!」
椅子を引いてくれたスマートさとのちぐはぐさに思わず笑ってしまう。


この先に捨てる場所があると伝え、
2人でドリンクの残りの氷を捨てていると腕がとん、と当たった。

さっき教室で転ばないよう掴まれたところに近く、
思い出して人知れず顔が熱くなる。

「こ、このトレイは上に重ねて、これで片付け完了だよっ!」

店内のこもった空気から早く出ようと、ドアへ向かうと
目の前で勢いよくドアが開いた。

これから店内に入ろうとする人にぶつかりそうになったかと思えば
咄嗟に鞄が後ろに引かれ、何かに背中から寄りかかる。

顔をあげると斜め上から結城くんにのぞきこまれる。

「大丈夫?」


「う、ん……ありがとう」

今日二度目の同じような助けられ方に、
自分の前方不注意を反省しながら謝ると

「よかった」

ほっとしたような顔を向けられまたもやむず痒くなる。


さっきからちょくちょく感じるこの感じ。

慣れない男子との交流に舞い上がっているのか、
急に距離が近づいたイケメンにときめいているのか。

……私たちのこの関係って好きとかそういうの一切ない、
青春っぽいことをするだけの間柄なんだよね。

私ももちろん結城くんも、
お互い特別に相手を想って選んでいるわけじゃないってことだよね。

なんかそれって、いいのかな。
私既にこんなに勝手にドキドキしちゃって
これからうまくやっていけるのかな。

目の前の自動ドアが開いたまま悠長に耽っていたことに気づき
慌ててドアから離れる。

ぶつかりかけちゃった人大丈夫かな?

そう思って前を向くと視線を感じる。

目を見開いてかたまるうちの学校の女の子がいた。