結城くんと青春したい!



「ゆ、結城くん……?」


正気ですか?なんてテンションで名前を呼ぶと

彼は一層身を乗り出した。


「……今までそういうのしたことないからしてみたい」

確かにさっき言ったようなことを結城くんがしているところが想像つかないかも……。

なんて彼の言葉の背景を汲み取ろうとしていると、

「先ずは『放課後カフェに行く』だっけ、いつにする?
俺は今日この後でも……」

え?この後!?


一つ一つの言葉をしっかり落とし込む前にどんどん爆弾が降下される。


「あ、でも先ずはゴミ捨てしなきゃ」

そう言ってテキパキとまだ残っている掃除の後片付けをはじめる。

やたら積極的な言動と冷静な様子とのギャップが凄すぎて風邪ひきそう。


確かに諸々に付き合って欲しいっていったのは私だけど、
勝手に人とは一線を引いた人だと思っていたから乗り気な態度に違和感を覚える。


そもそも、放課後デートとかそういうことをやってみたいなら
今日の昼休みの告白も何故断ったんだろう。


「それなら今日の昼休みの子にお願いしてもよかったんじゃないの?」

気になって思わず聞いてしまう。


「昼休み?」と一瞬怪訝な顔になるも

「やっぱり廊下に居たの瀬崎さんだったんだ」

納得がいったように軽く頷く結城くん。


「う、うん、なんかごめん、偶然近く通って聞こえちゃってさ」

結城くんも私に気づいてたのね。
やっぱり目が合ったのは気のせいじゃなかったみたい。


結城くんは昼休みを思い返すように

「確かに昼休みも『付き合って』って言われたけど……」

少しだけ掃除ロッカーにかけた手が一瞬止まるも
すぐにロッカーの戸をしめて私に背中を向けたまま

「何がしたいのか、目的の内容がなかったから
何に付き合えばいいのか言葉の意味がわからなくて」

と淡々と答える。


『目的の内容がなかった』って、どういうこと?
逆に言うと私はそれを伝えることに成功しているってことだよね?

私が理解できていないことを察したのか

「瀬崎さんの場合は、『憧れている青春生活を疑似体験』することに付き合ってほしいって伝えてくれたから」

こちらを向き、やけにすっきりした表情でそう言った。


……ふむ。

ということは、昼休みの『意味が分からない』って言葉はそのままの通り、
何に付き合えばいいのか、話の内容の意味が分からないって言ってた?

もしかして今までも全部こういう感じで
女子がアピールしたり告白しても伝わってなかった説?


試しに私なりの解釈で昼休みの子の発言の意味を伝えてみる。


「昼休みの子のそれは……好きな人への告白、だったんじゃないかな?

『付き合う』っていうのは何かの行動に、ではなくて
“彼氏”になってほしいってことで――」


どんな反応がくるのか表情に注目すると、

「……そう、だったんだ」

澄んだ顔で納得している。


……わかった、この人、ド天然なんだ。


こんなに面と向かって話したことなかったから私も今まで気づかなかったけど、
恐らく本人は無自覚に人から冷たいって誤解されているだけなんだと思う。


「え、彼氏、か……」

なんか困っているようにひとりでぼそっと言ってる姿を見て

――面白そう。

ストレートな自分の感想に思わず浸る。


こんなにキャラクターが立っていて、

説明すれば何でも吸収してくれそうな彼に対しての好奇心がうずいてしまう。


さっきは思わず勢いで思考もまとまらないまま
付き合って欲しいなんて口走ったけど、

改めてやっぱり結城くんのこともっと知りたい。


純粋で無垢な同級生に抱くものとしては誠実な感情ではないだろうけど、
今後も発揮されるだろう天然故の彼の行動をもっと見ていたい。


根拠のないわくわく感に襲われて動けないでいると、
それを『待機』と解釈したのか

「お待たせ、掃除終わったしカフェ行く?」

黒髪をさらりと揺らして首を傾けた彼に

「ぜひお願いします!」


なんて。


食い気味に返事をした。