結城くんと青春したい!



俺でよければ……って、

付き合って欲しいっていう私の言葉に対して、

まさか‟イエス”の意味の『はい』だった?


現状の理解に時間がかかり、
目の前の結城くんを見上げたまま目をぱちくり。


さっきの言葉を否定するでもなく、
何も言わない私を不思議そうに見てくる。


え、嘘、なぜか私結城くんと付き合えるの?


昼休みに告白していた子はあんなにこっぴどく振られていたのに?

も、もしかして私のこと好き……だったとか!――


「えーと……それで、俺と何をしたいって言ってくれたんだっけ?

俺はどうしたらいい?」


好かれていたなんて知らなかった!なんて驚いていた瞬間、

しびれを切らしたんだろう結城くんによって現実に戻された。

んん?
なんか、会話が成立していないような……。


告白なんて一大イベントを経験しているかとは思えない程冷静な自分のまま、

かけ間違えたボタンを直す感覚で確認する。

「その前に、さっき私が言った言葉がどういう意味かわかってる?」

一瞬私の質問の意図を図りかねるような沈黙があったけど
すぐにすんとした顔つきに戻り結城くんは口を開いた。


「……瀬崎さんが‟何か”したいから、
それで俺にそれを手伝うのを付き合えって」

あ、これ全然伝わってないわ。


思わず顎が落ちそうなほど口が開きそうになって
慌ててぎゅっと唇を結ぶ。


こ、これは……
伝わってないうえに、こういう展開漫画でよくあるやつ!

鈍感なキャラクターが‟付き合う”の意味をはき違えるやつ!

現実で本当にこんなことが起こるなんて……!!


一通り心の中で地団駄を踏み終わると、何かがじわじわこみあげてくる。


怒涛の展開に感情のメーターがバカになってしまったんだと思う。


「……っふ……ふふ!あはは!!」


さっきからの張りつめた空気に対して
あっさり迎えた間抜けなオチに、思わず声が出てしまった。

急に笑いだした私を見て驚いたように固まる結城くん。

流石に何か言わなきゃ、と
笑いすぎて目じりに滲んだ涙を拭いながら
「青春したいって言ったの」
と説明する。

結城くんはそれを聞いて尚更よくわからなそうにしている。

そりゃそうだよね。


色々と吹っ切れた私はひと笑が落ち着き屈んでいた体を起こして、

漫画のあらすじのように客観的に言葉を紡ぐ。

「すごく抽象的な言葉で伝えてしまったんだけど、

要は、私が日頃常々憧れている青春生活を結城くんと疑似体験できたらなーと。

例えば、放課後カフェに行って語ったり、
夜寝落ちしちゃうまで一緒に電話したり、

後は……休みの日にテーマパークとかショッピングみたいな
色んな所におでかけしたり。

――そういうことを結城くんとしてみたい!
なんて、夢見ちゃったんだよね」

自分にやれやれと苦笑しながら、

変なことを言って混乱させてしまったし
迷惑かけるのもこのくらいにしてもう帰らないと、と

顔をあげると

放課後で太陽が西に傾いていて教室が仄暗いせいか、
やたら光が宿っているようにみえるきらっきらの目で
結城くんがこちらを見ていた。


「……それは、ぜひ、やってみたい」


ま、まさか肯定の言葉が返ってくるとは思っていなかった。