味噌汁を手早く作ると、冷めないうちにと急いで執務室に戻りました。もちろん運んだのは私じゃないよ、マゼンタですよ。勢いよく厨房に戻ってきた私を見て後片付けの真っ最中のみんなが驚いていたけど、理由を聞いて協力してくれたんです。
「ライラが運ぶと、執務室に着く前になくなっちゃうでしょ!」
「おっしゃる通り」
 ということで、味噌汁を運ぶのを手伝ってくれました。ついでにつまめそうな料理とお茶も載せて。

「ああ、美味い」
 竜王様があまりにしみじみ言うもんだから、さっきまでのイライラした気持ちが霧散しました。竜王様の許可をいただいたので、私も一緒に食べさせていただいています。私の分は『ライラの分はないのか?』という竜王様のお言葉で察したマゼンタが持ってきてくれました。
「座ってるだけなのに、疲れますよね。あの席」
「そうだな」
「食べられないし、くつろげないし。ほんと大変です」
「あそこでくつろげたら大物だ」
「ですね」
「ほんとに今日は長い一日でした。緊張したりリラックスしたり、かと思ったらまた緊張したり。ジェットコースターみたいだったなぁ」
「なんだ?」
「ああ……えっと……急転直下? 落差が激しい? みたいな感じです」
「そうか」
 二人で味噌汁を飲んだり、軽食を食べたり、こんな深夜に飲み食いしたら体重に響きそうだけど、今日だけは許しましょう。頑張った自分を、ちょっとだけ甘やかしたい。
 そんな私たちのちょっとした『お疲れ様会』は、もう少し続いたのでした。