最近、松永先生に会う事が学校でも怖くなっている


特に話す事も無く、教室と言う空間に一緒に居るだけでも‥‥





「水面上に一定の厚さの油が浮いている。水の屈折率を4/3,油の屈折率をーーーー」




物理の時間



この声を聞いているだけでも耐えられない



松永先生の顔を見る事が怖くて、
今も黒板を見る事さえ出来ない


机の上の、教科書と真っ白のノートをジッと見ているだけ




‘お前はずっと俺の奴隷だからな‥‥。
逃がさない‥‥’


夕べ、言われた言葉が頭から離れない


爪で傷付けられた体が、夕べの事を思い出したように痛んで来る




ベッドのシーツに流れた、私の赤い血ーーーー




「安達?」


その声に顔を上げると、松永先生がこちらを見ている


松永先生だけじゃなくて、クラスのみんなも



「安達、さっきから体調が悪そうだけど大丈夫か?」



「‥‥はい」


そう返した声は掠れて、クラス中のみんなが心配そうに私を見ている




「‥‥実は朝から少し体調が悪くて、早退させて下さい‥‥」



松永先生から離れたい


同じ場所にさえ居たくない‥‥




「未央、今日元気なかったもんね?」


隣の席の杏奈(アンナ)にそう言われ、頷いた


元気が無かったのは、この男に会いたくないから




「そうか。分かった。
気を付けて帰れよ」



「ありがとうございます」


私は素早く荷物を纏めると、席を立ち教室を後にした