「ただ…私、料理は出来ないかもしれないけど。
いいかな?」



受験が終わり、今度は料理を広子さん達から教えて貰ったけど、
そっちの方は、どれだけ頑張っても成長しなくて。



「それは大丈夫。
こっち来てから俺自炊してんだけど。
俺、けっこう料理上手みたいで。
昨日もぶり大根と筍ご飯作ったんだけど、いい出来で」



この人が料理するんだ、とナツキの頃を知っている私は、驚いてしまう。



「未央さん、末長く俺の事よろしく」


「うん」


私はあの夜みたいに、この人の事を強く抱き締めた。



「ほんと、未央って可愛い」



その声は、ナツキを思い出すもので。



もしかしたら、私がこうやって追いかけて来るように、ナツキに仕組まれていたんじゃ…




と頭の片隅で、思うけど。


ま、いっか。




(終わり)