「けど、これ高かったんじゃない?」


そのクロムハーツのネックレスを指で触り、見ている。



「興信所に払って、残ったお金で買ったんだけど。
あのナツキがくれた50万の」



きっと、現金で返しても、
この人は受け取らないと思うから。




チラリ、とこの人の左手を見ると、
ナツキがしていたあのクロムハーツのリングは消えていた。



「久志は、私の事侮ってたでしょ?
子供だから、きっと何も出来ないって。
こんな風に追いかけて来ないって」



「いやいや。
侮ってないよ。
いつか来てくれると信じてた。
未央さん」


そう、初めて呼ばれたその未央さんって呼び方は、
私を大人の一人の女性と認めてくれたような気がした。


いつか、未央ちゃん、と呼ばれていた時とは逆で。




「でも、俺、今は月に手取り18万くらいしかないけど、いいの?
この先資格取ったら、もうちょいは上がるかもしれないけど」


「構わない。
私も働くし、なんなら久志よりももっともっと稼ぐから!」


「なんか本当にそうなりそうで、怖いんだけど。
あ、車はもうベンツじゃなくて、
中古の軽自動車だけど、いい?」


「別に車なんか動けばいいし。
なんなら、車なんかなくてもいい」


「そう」