「お腹とか空いてるなら、何か食べに行く?」
「お腹は空いてないけど…」
夕食を摂ってからある程度時間は経っているが、
特に空腹はない
なんなら、今飲んだカフェオレでお腹が満たされている
「あ、そう」
「うん」
颯爽と歩くナツキの後ろを、わざと少し離れて歩く
なんとなく、こんなイケメンの横に並んで街中を歩くのに、
躊躇ってしまう
絶対、横の女どんな顔してるんだ、とかジロジロ見られるだろうし
「ちゃんと付いてきてる?」
ナツキはそんな私を振り返り、手首の辺りを掴んで来る
「この時間、この辺危ない奴ら多いから、あんま俺から離れないで」
「う、うん‥‥」
喫茶店でずっと考えていた
ナツキに言われたように喫茶店で待たないで、あのままどっかに行ってしまっても良かった
特に連絡先も交換してないし、
あのまま別にそれっきりでも構わないはず
なのに‥‥
なんで、私は今こうやってナツキに付いていってるのか
なんとなく、またナツキと会って分かったような気がする
多分、ナツキはけっこういい奴なんだろうって思うから
今も私の事は行きがかり上みたいな感じだけど、家出娘状態の私が放っておけないのだろうって
私が余計な事を話してナツキを責めたから、
その辺りも負い目を感じているのだろう
「もしかして、緊張してる?
自分から誘っといて」
そう言ってナツキは意地悪な顔で笑うけど、
私の手じゃなく、手首を掴んでいる辺りに、
彼がそんな事を考えていないのが分かってしまった
そうやって本心や本音を隠そうとする彼
そんな彼がどんな人間なのか、もう少し知りたいと思ってしまった



