「俺、引っ越しするから。
それで、けっこうもう新しい部屋に荷物運んでて。
その関係で、今日、未央呼ぶのこんな遅い時間になったんだけど」


「…引っ越し?」


「実を言うと、未央と出会う少し前からちょっと考えてて。
ホストの仕事もしんどくなって来てて。
前々から、幼馴染みのお兄ちゃんが働いてる職場が人手不足で、
俺に一緒に働かないかってずっとしつこく誘われてて。
それも、いっか、って」


「えっと。
前にナツキ、島で育ったとか言ってたよね?」



‘ーー俺、S県の小さな離島で生まれ育ったんだけど、海に囲まれてて。ーー’



「そうそう。
S県の離島なんだけ。
あ、けど、その職場は島じゃなく、S県の本土の方なんだけど」


「S県って…」


此処から、新幹線で何時間もかかる距離…。



それって…。



「だから、今日は未央にお別れを言おうと思って」


ナツキは、そう私に笑い掛ける。