ナツキはスマホを取り出し、電話を掛けている。


多分、その相手はアヤノさんで。



「…あ、うん。
大丈夫…。
ちょっと、時間作って貰っていい?

ちゃんと話そうと思って。


ああ、そう…。

じゃあ、今からお前のマンション行くから」


ナツキはそう言って、電話を切った。


そして、私の方を見る。



「そんな感じだから、未央、帰って貰っていい?」


「あ、うん…」



「この部屋の、合鍵返して」


「えっ?」


なんで?とナツキを見てしまう。



「暫く、考える時間が欲しい。
その間、未央に会わないし、連絡も取らない。
未央も、俺に連絡して来ないで」



「何それ?勝手だよ」


「うん…そう思う」


「このまま、私の事も終わりにする気?」



多分だけど、ナツキはアヤノさんとよりを戻す気はないと思う。


そんな事をしても、また同じ事を繰り返すだけだとナツキも分かっているだろう。


同情で、女性と付き合うタイプではないだろうし。


だけど、同時に、私との関係もめんどくさくなってしまったんじゃないだろうか?

もう、揉め事は沢山だと。



「このまま黙って未央の前から逃げるとかはしないから。
ほんの少しの時間、一人で考えたい」


お願い、と辛そうに目を伏せるナツキを見て、
分かった、と、私は鞄の中のキーリングから、
ナツキのこの部屋の合鍵を取り外した。



そして、それをテーブルの上に置くと、
私はナツキの部屋から出た。