「俺、自分は絶対大丈夫だって思ってた。
こんなヘマしないって」



ナツキの言うそのヘマは、今回の事なのだろうか。




「驕ってたのかも。
周りのホストが、血生臭く客の女と揉めたりとかの話し聞いても、他人事だと思ってた。
俺は上手くやってるから、自分には関係ない話だって。
枕はしても、俺的に色恋はしてなかったし」


私はただ黙ってその言葉を聞く事しか出来なくて、
ナツキの傷に、新しいタオルを当てた。


「絶対なんかないのに。
相手は人間で、その心を商品のように取り扱っていて。
絶対に、大丈夫なんて事ないのに…。
分かってたのに…」



ナツキの心はとても傷付いていて、
今回の事で、ホストとしての自信を無くしたのかもしれない。



そして、ホストとして女性を傷付けている事に、今回の事でもう耐えられなくなったのかもしれない。



「一回、ちゃんとアヤノと話し合う。
俺、別れる時、ちゃんとアイツに向き合わなかったから。
アイツも同業だし、だから、大丈夫だって、勝手に決め付けて」


「…大丈夫なの?」


そのナツキの傷を見て、思う。


またアヤノさんに会ったら、
次はもっと酷い目に遭う可能性だってある。


「大丈夫。
気持ちは無かったけど、数ヶ月はアヤノと付き合ってて。
それなりに、アイツがどんな人間かは分かっているから」


「大丈夫じゃないから、そうなってるんじゃないの?」


そう言った私の言葉に、ナツキは小さく笑っている。