「べつに、いいよ。
俺は特に慰謝料とかは請求されなかったし。
事実確認の為だけに呼ばれただけみたい。

誤魔化そうにも、興信所にあんだけハッキリと写真撮られてたら、言われた事に肯定しか出来なかったけど。

あ、ごめん。
こんな話聞きたくないよね?」



「ううん。大丈夫」



相手の男がホストだから普通の浮気ではないからと、

その辺りは穏便に済ませたと父親が言っていた



実際、母親の方を悪者として離婚出来るきっかけが出来て、
父親はナツキに感謝すらしたいぐらいじゃないだろうか



本来なら、自分の不倫で母親に払わなければいけなかった慰謝料が無くなったわけだし





「とにかく、俺今は店に戻らないといけないから」



「あ、うん」



少し長く話しすぎた


お店にはナツキのお客さんが沢山いるだろうから、

いつ迄もこんな所で話してる場合じゃないだろう




「ここの道を真っ直ぐ行ったら24時間空いてる喫茶店があるから。

俺、後1時間くらいで終わるから待ってて」



「え?」



「この後、特に行く所ないんでしょ?」



「――うん」



再び、この後どうしようかと、
考えてしまった


家に帰れるだけのタクシー代くらいはあるが


家に帰りたくない




「俺と関係持ってみる?」


ナツキの手がゆっくりと私の頬を撫でるように触れた


今、私の頬は酔いと照れで真っ赤で、熱いはず



ナツキは何も言えない私の顔を見てクスリと笑うと、

踵を返して階段を降りて行く



その後ろ姿も綺麗で、

その姿が段差に隠れて見えなくなる迄見惚れてしまった