「人を好きになるなんて、ほんとに一瞬なんだと思う。
俺はあの瞬間、未央に堕ちたから」




あの時、ナツキの背がとても悲しくて淋しがっているように見えて、
私は気付いていたらナツキを抱きしめていた。



‘ーーべつに淋しくないしーー’


‘ーー淋しいくせにーー’



「俺、初めてだった。
あんな風に、女から抱きしめられたの。
お前、女の癖に、力強すぎだし」



そう言われ、バカ力な自分が恥ずかしくなってしまった。




‘ーーしばらく、このままで居て。
今、俺顔とか見られたくないから‥‥ーー’



そう言って、あの時ナツキは泣いていた。




「本当に本当に、ナツキは私が好きなの?」


なんだか、信じられない気持ちと、

もっとナツキに好きだって言われたくて、そう口にしてしまう。


「俺、女のそんな感じ嫌い。

言わせたい、みたいなの」


やはり、大人のナツキには私の考えなんてなんでもお見通しみたいで。



ナツキは体勢を起こして、
手を伸ばして私のシートベルトを外す。


えっ、と目の前に迫るナツキの顔を見た。